jigyousaisei-pro’s diary

事業再生について、つらつらと。粛々と。

DESって何?

DES(Dept Equity Swap)は、英語の綴りのとおり、債務(Dept)と株式(Equity)を交換(Swap)することです。

 

「債務を株式に変更」する取引で、通常、事業再生のために行われる。

方法としては、金融機関が貸出金の一部を現物出資し、その出資に応じた株式を受け取るケースが多い。

 

債務は返済の義務があり、利息の支払が必要。

株式は負債ではなく、資本。原則的には金銭の償還の義務は無く、配当の支払は利益がでたときのみ。

 

<債務者のメリット>

単純に負債から資本に振り替わるので、債務超過が一瞬で解消したり、有利子負債の削減効果が著しいなど、良いことづくめ。

さらには「銀行が株主になって支援してくれている」というプラスのアナウンスメント効果も。

また、言ってみれば「帳簿上」だけの取引みたいなものなので、現金の支出を最低限に抑えることができます。

 

<債権者のメリット>

銀行にとってもタダの貸金棒引きと違って、将来会社が本当の意味で再建したら、株式を再建した会社に買い取ってもらったり、配当を受け取ったりすることができるという意味で将来に希望が残ります。

議決権がある場合には、銀行が積極的に経営に関与することがあります。

 

 

なんか、良いことばかりのようなDESですが、一方で困った所もあります。

 

とりあえずDESを実行すれば、債務超過の解消や有利子負債・支払利息の削減が手に入る。金融機関側としても金融債権の評価の区分が変わって管理対象から外れるなど、「今、とりあえず良くなる。ただし帳簿上のみで。」という効果があるため、実質的に再生対象企業、金融機関双方にとっての「問題の先送り」になってしまうことになりかねない。

 

結果として、営業利益を生み出す過程に問題があれば、遅かれ速かれ企業の命は風前の灯火。帳簿上の数字遊びで企業の根本が変わる訳ではないので、ほっと一息ついていままでどおりの会社経営をしていればすぐに行き詰まります。

 

なんか、一番最初このDESの方法を聞いたときって、「えぇ!そんなバカな!」っていう感覚がありました。

わかりません?この感じ。

 

そんなんで債務超過にならないって・・・。でも、まぁ確かに・・・。

という速度の納得感。

 

このほかの留意点としては、対金融機関の事業再生の場合は問題ないと思いますが、DESをグループ関係会社感等で活用する場合は、活用前に客観的で合理的な再生計画を立てて置かないと税務上の問題がでる場合がある、ということでしょうか。

債権者側が現物出資ではなく、寄付金課税とか、諸々あります。

 

 

事業再生の「自力再建型」と「スポンサー型」の違い

事業再生には、「自力再建型」と「スポンサー型」という2通りのタイプがあります。

 

自力は読んで字のごとく、「自ら」の「チカラ」で再建する事業再生。

スポンサーは付かないので、経営改善を行うことで自らの事業から生み出す収益に磨きをかけ、その事業収益で負債の返済を行う方法です。

 

スポンサー型は、その再生対象企業が行う事業に興味を持った企業が、最終的に対象企業を傘下に収め、その主導のもと事業拡大を図ろうとする事業再生です。

 

スポンサーから資金や人材の援助が考えられます。

 

スポンサーは何にメリットを感じて再生対象企業の支援を行うのでしょうか?

銀行の話と同様、こちらも経済的なメリット・合理性が無くてはいけません。

 

その理由として挙げられるのは

1.スポンサー企業の既存事業とのシナジー

2.スポンサー企業の商流上、再生対象企業が倒産すると困ってしまうケース

3.両社の特別な関係、その他

 

1の「シナジー」。簡単に言うと「相乗効果」

例えば、下記のようなポイントがシナジーと言われるものです。

 

・スポンサー企業と再生対象企業は製造業で、同じ種類の原材料を仕入れていた。両社合わせて仕入を行うことによって、大幅な仕入原価の低減が見込める。

・再生対象企業の商品をスポンサー企業の販路で販売することによって、今まで以上の売上の増加が見込める。

 

2のスポンサー企業の商流上、という理由としては

例えば、再生対象企業はその地域唯一の販売代理店で、消滅してしまうとスポンサー企業の商品を販売してくれる企業が無くなってしまう!などが上げられます。

 

上記の2点は、経済合理性を持っていると言ってよいと思いますが、次の3はなかなかそうは言えないですよね。

 

例えば、再生対象企業の社長がスポンサー企業の社長の弟だった、とか。

血縁は無かったけど、地域の名士として通っているスポンサー企業の社長が、世間体上、スポンサーとして引き受けないわけにいかない、とか。

3番はよほどスポンサーの経済的な体力が強くないと、その後大変なことになるパターンが多いです。

 

スポンサー型のどのパターンだとしても、資金や人材、業務上の支援なんかを受けながら、スポンサー企業が主導して再生を図っていくことになります。最終的にはスポンサー企業の傘下に入るわけで。。。」。

 

事業再生を行う場合、どちらで行えば良いのか?という疑問が起きるわけですが、まずは「自力再建型」で検討し、経営改善を行いつつ、スポンサーを探す、という形がベストな場合が多く見られます。自力再建で再生できれば、他社の傘下に入ることなく再生ができるからです。

 

しかし、いずれの再生方法の場合であっても、経営改善によって「営業黒字」をしっかり出せなければ長続きはしません。

 

銀行、スポンサー、どちらからにしろ、出してもらったお金と事業で稼いだお金。

お金に色はついていませんが、いつまでたっても事業でお金を生み出せないとしたら、そんな事業をいつまでも養うヒトはいない、っていう事ですね。

 

 

 

 

事業再生とは

事業再生とは、主に過剰債務を負いながら、事業から生まれるキャッシュフローだけではそれを返済することができない企業が、その状況を打開するために事業や財務の再構築を実行し、持続的な事業存続を可能にするプロセスをいいます。

 

簡単に言うと、倒産(破産)しそうな会社をなんとか存続させること。

 

企業はどんな時に倒産(破産)するのでしょうか?

 

A.ビジネスで損失(赤字)が出た時

B.現金が尽きた時

 

簡単!Bです。

 

赤字がいくら出ていようが、現金が続く限り会社は生き続けます。

 

お金には色(何で稼いだ?)がありません。

 

事業で稼ぎ出したお金なのか、自宅を担保に銀行から借りてきたお金なのか、支払の際、その由来を問われることは無くーーー1万円は1万円。諭吉さんは諭吉さんなのです。

 

というわけで、「現金」が無くなった会社を助けるには、「現金を与える」か、「現金を支払う理由を無くす」のどちらかを行うことになります。

これ、すなわち事業再生。

 

「現金を与える。」ーーー新たにカネを貸す。出資する。

「現金を支払う理由を無くす。」ーーー支払を延期する。借金を無かったことにしてあげる。

 

文字にするとスゴイですね。潰れそうな会社に対して、お金を貸したり、貸したお金を勘弁してあげたりするっていうことです。

 

だれが?

 

主に金融機関(銀行)ですね。

 

何のために?

 

さあ、銀行は何のために借金を減額するのでしょう?

 

その会社の従業員の雇用を維持するため?

地域経済を弱体化させないため?

 

これらも事業再生の目的としてよく示されている内容です。

これらも確かに理由になります。・・・が、私は、これだけでは銀行は借金の減額に応じることはできないと思います。

 

銀行も民間企業で、株主もいます。経営者は大きな責任を負って会社を運営しています。いくら地域経済のためだといっても、他の会社にただお金をあげるだけ、というようなことが許されるのでしょうか?

 

許されません。少なくとも私は許しません。

 

銀行が借金の減額に応じるのは、

「応じなかった時よりも多くの貸金が回収できる」からです。

 

事業再生の計画を立て、銀行にその内容を説明し、借金の減額をお願いした場合に、銀行の担当者は考えます。

 

「もし、Noと言ったら、いついつぐらいにはこの会社は現金が尽きて事実上倒産するなぁ。その場合、うちの銀行に入ってくる金額は・・・」

と、倒産した場合の回収額を見積もります。

 

事業再生計画による回収額が、倒産した時の回収額より十分に多く、さらにその計画の実現可能性が高いなど、納得できるものである場合に、初めて銀行は借金の減額に応じることができます。

 

銀行の株主から見ても、回収額が大きい方が株主利益に合致しています。

 

と、いうことで事業再生とはこのようなロジックで実現される、倒れかけた事業を生き残らせる方法なのです。